第11章 終焉
「見ていたの?」
「聞いていただけです。少し痛むかもしれませんが……」
「いっ……」
タオルでそっと、頬を押さえる。冷たい感触を味わいながら、アリスは口を開けた。
「シエル達は、私のことをどう報告するかしら」
「女王に……ですか?」
「ええ、そうよ。彼が私を裏切り者だと報告すれば、グレイはともかく……女王自身黙ってはいないでしょうね」
「そうかもしれません。ただ、それは杞憂かもしれませんよ?」
「え?」
「アリス!!」
どんっと勢いよく再び扉が開かれる。そこには、いつも通りの気高い空気を纏ったシエルと、柔らかく微笑む彼の執事、セバスチャンだった。
「調子はどうだ? ああ、それとグレイ伯爵との対談はどうだった? ……って、その頬はどうした」
「対談は無事終わったわ。少し、ビンタをお土産に頂いたけど」
「なんだと……? ったく、あの男は一体何を考えているのやら……君も君だ、あの男に隙を見せるな」
「そんなつもりはないけど……」
シエルは、ふわりと彼女に近づくと可愛らしく、頬に口付けを落とした。
「……は?」
「ほら、見ろ。隙だらけだ」
「……っ、馬鹿じゃないの!? こんの変態っ!!」
瞳が重なる距離、互いの瞳の奥に姿が映り込む。彼女の鼓動が、一瞬高鳴った気がした。その光景を鋭い視線で見つめるのは……――。