• テキストサイズ

黒執事 Blood and a doll

第11章 終焉



「坊ちゃん、アリス様。屋敷に戻りましたら暖かい紅茶をいれて差し上げましょう。美味しいクッキーも、お供に」

「ヴァインツ家のおもてなしも結局中途半端だったわね! ごめんね、シエル」

「別に気にすることはないだろう。時間なら、あるのだから」


 微笑んだ四人の顔が、太陽によって眩しく照らし出される。永遠かと思われた長い船の旅は、こうして幕を閉じた。














「ふぅん、つまりラビットファミリーは海の藻屑となったわけか」

「ええそうよ。グレイ伯爵、ありのままを伝えているのに随分と疑うじゃないの」

「ボクはアリスの言葉ならなんだって信じているよ?」

「嘘ばっかり……」

「まぁ、いいや。とにかく君達が無事でよかったよ。陛下にはしっかりと伝えておくね」


 グレイは暖かい紅茶でクッキーを流し込み、席を立った。


「シエル・ファントムハイヴは?」

「客間で休んでもらっているわ」

「貧弱だね、アリスを見習ってほしいものだ」

「二つ歳が違うんだから、一緒にしたらダメよ」

「随分彼と仲良くなったみたいだね? アリス」


 グレイが怪しい瞳で彼女を捉え、そっと頬を撫でた


「君はボクだけのモノだよ? 忘れないで」

「忘れました、今」


 乾いた音が響く。

 グレイは、彼女の頬を躊躇うことなく叩いていた。


「君の執事が席を外してくれてよかったよ、じゃないと煩いもんね。君を傷つけると」

「っ……」

「君は、ボクだけの"玩具"なんだから。勝手に死んだりしないでね? それだけ」


 窓から優雅にグレイは飛び出していった。相変わらず、玄関から出て行ってくれない人だと心の中で溜息をつきながら、アリスは赤くなった頬を押さえた。


「姫様!!」


 すぐさま扉を開けてやってきたのは、クライヴ。手には濡れたタオルを持っていた。

/ 205ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp