第10章 花束
「アリス、銃を構えろ!!」
「くっ……!」
涙を知らず知らず呑み込んで、弾丸は奴らの脳天をぶち抜いていく。続く悪夢、縺れそうな足を何とか動かし、二人は安全な場所を求めてその場を駆け抜ける。
恐ろしい程の化け物の数。この中で、どれだけの人間が生き残ってくれているのか?
とある広間に飛び込んだ瞬間、アリスは……今日一番の悲鳴を上げることになる。
「え……?」
見覚えのあるホール。そうだ、ここでマーガレット・コナーの死体が……ということは、そこに横たわっている少年は誰だ?
「……あ……ああ……」
肉を食いちぎられ、無残な少年の身体。金髪碧眼の綺麗な顔をした、少年。
「アロイス――っ!!!」
目を開けたまま、彼はぴくりとも動かなかった。彼の傍らにいるはずの漆黒の執事の姿は、どこにもない。