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黒執事 Blood and a doll

第11章 終焉



 ――嫌だ! どうしてどうしてどうして……何故、アロイスが!?


 崩れ落ちそうになる彼女の身体を抱き留めたシエルでさえ、目の前の光景が信じられなかった。


「これはこれは、アリス様、お待ちしておりました」

「……!!? クロード?」


 顔色一つ変えない男、トランシー家執事、クロード・フォースタス。何事もなかったかのように、眼鏡をくいっと上げて綺麗な白い手袋をつけたまま、闇の中姿を現す。クロードはアリスへと手を差し伸べた。


「ここは危険です、行きましょう」

「何を……言っているの?」

「何を? ですから、早くここを出ましょうと言っているのですが」

「そんなことを聞いているんじゃないわ!! アロイスは……どうしたの」

「どうした? ふふっ、面白いことを聞きますね。そこに、いるじゃありませんか」


 彼が指さすのは、紛れもなく無残に転がる少年の方へ。


「貴方はアロイスと契約している、悪魔の執事でしょ!? どうして彼が死んでいるの!!?」

「彼には、失望しました」

「失望……?」


 クロードの瞳の奥には、確かな赤い瞳がアリスを捉える。愛おしいものを、映すかのように。


「アリス……? いる……の?」

「アロイス!?」


 彼の声を耳に入れ、アリスは彼の元へと駆け寄った。ボロボロの姿で、よく息があったと言える。けれど、虚ろな瞳は誰も映していない。けれど……。

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