第9章 混乱
「っ……! アリス様っ!!」
「え……?」
一人の化け物が、大きく腕を伸ばし彼女の足を掴んだ。
――しまった……っ!
もう遅い、彼女の足はずるりと強い力で引き寄せられ、思わず箱から崩れ落ちそうになる。彼女の身体は恐ろしいゾンビの群れの中へと、今まさに堕ちようとしていた。
「姫様っ!!! ブラッディローズを!!」
クライヴの叫びと同時に、咄嗟に手元にあったアタッシュケースを乱暴にアリスは開けるのだった。中から出てきた二丁拳銃。
瞬時にトリガーを引けば、銃声が響き渡る。
彼女の身体は、堅い地面に叩きつけられるように落ちた。あまりの痛みにすぐに体制を整えることが出来ず、腕を上げ銃口を向けた先に化け物の大きな口。
奴らはもう、アリスの目の前……――。
「やっ……!!」
「姫様っ!!!」
一秒、二秒、三秒……。時は進む。
もう一度、銃声が響いた。