第9章 混乱
「アリス、一つ重大な試練があるんだ」
「……試練?」
思いの外真剣な眼差しのアロイスに、アリスは一体どんな試練が待っているのか……彼の次の言葉を静かに待った。
「耳を貸して」
「? い、いいけど……」
そっと、彼の方へ耳を傾けた。アロイスはゆっくりと、アリスの耳元へ唇を寄せ周りにも少し聞こえる大きさで、呟いた。
「荒ぶる鷹のポーズと共に、不死鳥(フェニックス)と叫ぶんだ」
「……馬鹿にしてんの?」
真顔の返答に、アロイスは「これだから素人は」と呆れたように溜息をついた。しかしアリスは自分が間違っているとは到底思えなかった。厳重に警備されたこの部屋と通る為に必要な合言葉が、それだなんて……。
その場にいた誰もが、アリスの意見に賛同した。しかし、クロードが一歩前に出て眼鏡をくいっと上げた。
「私がお手本を……」
堂々とした立ち振る舞いで、警備のいる扉の前まで近づく。