第8章 駒鳥
「ごめんなさい、別に私は貴方の言動に気分を損ねたわけじゃないの」
おずおずと、アリスはデザートを受け取った。
「では、何故?」
「それは……私の容姿は、目立つので。早く人の視線から遠ざかりたくて」
「ああ! 君は例のアルビノ体質なのだろう?」
「ええ……人間は好奇心の高い生き物。自分と違う生き物を前にすれば、物珍しそうにじろじろと見るじゃない?」
「……アリス嬢を見つめてしまうのは、容姿が他と違うからではないよ」
「……え?」
ドルイットはアリスの手を取り、その甲に口付けた。そして、顔を上げた彼の柔らかな微笑みが太陽みたいに思えてアリスは目を凝らした。
「人の視線を集めてしまうのは、君がとても美しいからさ!! 美しいパールの髪、ルビーのような燃える瞳。全て君を彩る宝石のアクセサリー!! シルクのように滑らかな肌に、気高き佇まい。そして! 耳に心地よく響く魔女も羨んだとされる人魚のような奪いたくなるほどの澄んだ声! どれも全て、君が視線を集めてしまうのも納得のいくものばかり!」
「子爵……?」
「だから、そんな顔をしないでおくれ。抱きしめて、しまいたくなるだろう」
彼が伸ばした手は、クライヴにより止められる。
「ドルイット子爵様、あちらで綺麗なご婦人がお呼びですよ?」
「おや? これはこれはっ!!」
何事もなかったかのように、ドルイットご婦人の元へと駆けて行った。アリスは未だ呆然と、ドルイットの背を眺めていた。