第8章 駒鳥
「私は何か彼女の癪に障るようなことを言っただろうか……?」
「さあ? ただ、アリス様は体調が本日優れないみたいですから」
セバスチャンもドルイットに会釈して、すぐに二人の後を追った。
「アリス・ヴァインツ嬢じゃありませんか! 私は船長のロバートと申します。本日は、当船にお越し頂きありがとうございます」
「いえ、こちらこそ貴重な船の出航記念に立ち会えて光栄です。これはほんのお気持ちです」
「花束を!? あ、ありがとうございます。貴族様にこのような施し……痛み入ります」
アリスが差し出した赤い薔薇。ロバートはそれを嬉しそうに受け取り、是非船を案内させてもらいたいと申し出る。それを快く受けたアリスは、クライヴを連れて船内を見て回ることにする。
「セバスチャン、貴方は貴方のやるべきことをしなさい」
「それもそうですね。では、また後で落ち合いましょう」
甲板、客室、パーティー会場、様々な場所があることを嬉しそうに語るロバートを尻目に、アリスは脳内で船内の地図をパズルのように作り出す。一つ一つ、ピースを埋めてだいたいの船内地図を完成させていく。