第6章 仮面
「とにかく、今は協力が必要よ。このチケットは明日にならなければ使えない……今日は備えましょう、明日に」
「そうですね……アリス様は、お休みになられた方がいい。坊ちゃんも、一人でも眠れているといいのですが。私は部屋に戻ります、そのついでに屋敷がもう安全かどうかも見て参りますね」
「私も、そうさせて頂きます姫様」
「わかったわよ……勝手にしなさい」
二人が部屋を出ていった。アリスは一人、床に突っ伏している男の死体を見つめた。
「私を狙いさえしなければ、もう少しくらい長く生きれたかもしれないね」
「いやぁ? それはどうかな」
「……――誰?」
振り返った先には、銀髪の髪を靡かせた白い騎士のような風貌の男。アリスには、見覚えがあった。気付けば現れた人物の名を口にしていた。
「チャールズ・グレイ伯爵。こんなところまで、わざわざ何の用かしら」
「ええ? ボクがどうしてここに来たかって? 毎日君の為に、君の為だけに定期的に通っているボクにたいして、その言い方は酷いんじゃないの?」
「毎回窓際に何かの死体とか、死骸を置いて行く人に言われたくない」
「気に入らなかった? おっかしぃなぁ。ボクが、君の好きなものを間違えるわけないでしょ? ブス」
がっとアリスの顎を掴んで、嫌悪感たっぷりにグレイは睨み付けた。彼女が振り払おうと暴れるが、その行為が更に彼の嫌悪感を煽るらしい。グレイはアリスを足払いし押し倒した。
「……グレイ伯爵っ」
「誰のお陰で最低限の殺しで済んでると思ってる? 本来なら、君はもっと血に塗れて地に這いつくばっているべきなんだ。そう、彼のようにね?」
くすっと笑って、顎から手を離すと腰の剣を抜いて、あろうことか彼女の肩へと突き刺した。