第6章 仮面
「そうだ! 俺達ラビットファミリーが狭いところで商売する羽目になったのは、貴様ら女王の眼と、番犬のせいだからな!!」
「……お前達……以前麻薬売買で捕まったはずの、ラビットファミリーだというのかしら」
「捕まった? お前達が捕まえたのはほんの一部に過ぎない。ファントムハイヴのガキは俺達が預かった。返してほしければ、兄貴が用意したこのチケットの客船に乗れ。そこにガキもいる」
「……だそうだ、やりなさい。ナタリー」
「あ? ぐっ!!?」
男の頭が、誰かの蹴りによって強打し、その衝撃で男は気絶した。
「ご苦労様、ナタリー」
「アリス様の命令とあれば、当然だろう!?」
シェフのナタリーがどうやら犯人らしい。蹴り足りなかったのか、ぐりぐりと靴の踵で踏みつけていた。しかし、アリスが彼女の足を蹴ったことでその行為は収束した。
アリスは面白くもなさそうに男が握っているチケットを奪うと、そのまま銃口を頭に向け、躊躇うことなく撃ち抜いた。
鈍い銃声音、火薬の香り。
「姫様、いかがいたしますか?」
「セバスチャン」
彼女が彼の名を呼べば、セバスチャンは涼しい顔をして彼女の前へと現れる。