第6章 仮面
クライヴとアリスは、共に応接間に来ていた。しかし、やはりこの部屋にもシエルがいる様子もなく彼女はどうしたものかと考え始める。
「これは……一体」
「相手の目的は、アリス様ではなかった、としたら?」
「どういう意味?」
「アリス様の命を奪えたら、それに越したことはない。けれど、本来の目的はシエル様を亡き者にすることだとしたら?」
「なら……何故彼は、あの部屋から消えた? 亡き者にしたかったのならば、殺せばよかったんじゃないの?」
「殺せない理由があったのでしょうか」
「すぐに殺しては……意味がない、とか?」
だとするならば、相手はよっぽどシエルを恨んでいるのか……それともただの愉快犯か。アリスが部屋を出ようとすると、瞬時にクライヴは彼女のの手を掴む自分へと引き寄せた。
「クライヴ!?」
「姫様、下がって」
「おいおい……気付くなよ、執事君」
気味の悪い笑みを浮かべながら、一人の男が姿を現す。手にはナイフ。クライヴの冷たい瞳が、男を捉える。だが男は怯む様子もなく、ただ愉快そうに笑うだけ。
「アリス・ヴァインツ殿! 今夜は実に楽しい宴だねっ! そうは思わないか?」
「お前は誰だ、何のためにこんなことをするの」
「何のために……? それは、自分の"名"に聞いてみるといい」
「……ヴァインツ家に、恨みでも?」
「恨みなんて陳腐なものじゃない。これは……見せしめだ」
「見せしめ?」
訝しげに男を見つめるアリス、男の後ろにある一つの影を確認すると、心の中で盛大な溜息をついた。