第4章 襲撃
「おっと、何処へ行くんだい?」
「っ……!」
背後から異様な声。瞬時に身体を一番近くの部屋へねじ込んだ。間一髪、弾丸を避けたことを頭の中だけで理解したアリスは、舌打ちをした。
「厄介ね……本当に」
彼女が滑り込んだ部屋は、遊技場。ビリヤードやその他色々、遊びの為の物が多く置いてある部屋。勿論、彼女を追うように扉が開けられる音がする。敵か?
「アリス・ヴァインツかなぁ? 小さい女が見えた気がしたんだよなぁ……そうなんだろ? そうなんだろ?」
男の声。聞き慣れない、つまりは少なくともアリスの知る人物ではない。
屋敷が襲撃されるのは、これで何度目だろうとアリスは相手にばれないように小さく溜息をついた。最初の頃はわりと焦ることもあったが、同じ場面を何度も経験すると人間の感覚は麻痺するようだ。またかと心の中で呟きながら、ホルスターに仕舞った拳銃に、彼女は手を伸ばした。
冷たく、堅い感触。彼女の真紅の瞳に、迷いなどない。
「お前は誰だ? 何が、目的なのかしら?」
「その声! アリス・ヴァインツだなっ!! へへっ……そんなこと、あんたが知ることじゃあない。あんたはただ……俺達に捕まって、大人しくしていればいいのさ」
ビリヤード台を背に、相手を確認するため覗き込む。
「なっ……!!」
「見つけたぁああああああ!!」
アリスが気付いた時には、男はナイフを振り上げ獲物を狙うように、狂気じみた瞳を見せた。