第4章 襲撃
「クライヴ、鍵は貴方に預けるわ。もしもの時は、それで彼らを保護しなさい」
「御意」
「私は東館へ。そっちは適当にやりなさい」
「アリス様……お一人で、大丈夫ですか?」
「ここは私だけが知る、盤上。玉座で座って待つのには飽きたわ。仕切っている無様なネズミ以外のモブネズミは全て駆除。一匹も逃がすな、ヴァインツ家の秘密を探る物はけして生かすな。いいわね?」
「イエス・マイロード」
再び聞こえてくる銃声を合図に、アリスは庭のある東館へと移動を始める。細い足でしっかりと地を蹴り、壁で身を隠しながら足を進める。
目的の場所へ到達すると、迷わず庭へと出ていく。庭では、庭師のギルが鼻歌を歌いながら花の手入れをしていた。
「ギル!」
「はい? どうしました、アリス様」
「ネズミが入り込んだわ。駆除を頭上から、お願い」
「……。イエス・マイロード」
伝言だけ伝えると、再びアリスは屋敷内へと戻っていく。それを見届けたギルは、屋敷の屋上への階段に向かい登り始める。騒がしくなり始める屋敷に、誰もが只事ではない空気を察知していた。
「うし、この辺からならよく見えるな」
屋上に設置されていたスナイパーライフルを引っ掴むと、姿勢を低くし構えた。そして、ゆっくりとスコープを覗き込む。
「俺の庭で悪さはさせねぇぜ?」
空を切るような銃声が聞こえる。その音を聞きながら、アリスは今度はクライヴ探すように屋敷内を駆け始める。