第4章 襲撃
「なっ!? 何事だっ!?」
「坊ちゃん、しっかりと掴まっていて下さい」
「セバスチャン!?」
廊下を走る彼らをまるで追いかけるように、銃声とガラスの割れる音が迫る様に聞こえてくる。シエルが見たセバスチャンの背後は、破片が散らばる無残な廊下。
前方で、メイドのリンスが物怖じしない表情で彼らを手招いた。
「リンスさん……?」
「どうぞ、こちらのお部屋へ避難下さい」
開け放たれた部屋に迷いなく、セバスチャンは入る。そこにいたのは、何故か紅茶を飲みながら溜息をついていたこの屋敷の主、アリスと執事のクライヴだった。
「おい、これは何事だ!?」
「どうやらネズミが入り込んだようね」
「何……?」
「伯爵。危ないですので、この部屋で暫し"掃除"が終わるまでお待ちください。すぐに、済ませて寝る準備を整えますね」
「おい……っ、何をする気だ?」
「ヴァインツ家に忍び込んだ哀れなネズミに、お仕置きだよ。行くわよ、クライヴ」
「はい、姫様」
アリスの右手には、黒い拳銃。腰にホルスターをつけると、拳銃をそこに収める。
「アリス嬢、女性が銃を取ると!?」
「何を驚いているのです? 悪の貴族、ヴァインツ家の当主がこれくらい出来なくてどうします?」
彼らをおいて、アリスはクライヴと共に部屋を出た。同時にしっかりと重い扉を閉ざすと、鍵をかけた。