第4章 襲撃
「申し訳ございません。お願い、出来ますか?」
「お任せ下さい。お仕事を奪ってしまうような形で、宜しかったですか?」
「構いません。私は、アリス様にココアをお運びしますので」
「……そうですか。それなら、よいのですが」
セバスチャンは台車からココアを受け取り、書庫へと戻る。その頃には、既にクライヴの姿はなかった。
「坊ちゃん、メイドのリンスさんからココアを頂きましたので、そのままお持ちいたしました」
「ん? ああ……」
傍にカップを置くと、シエルはカップに手を伸ばす。
「毒見は済んでおります、安心してお飲みください」
「……そうか」
シエルはココアを口にする。甘い後味が広がり、ぽかぽかと身体を暖める。セバスチャンは少し開いていた窓を、静かに閉めた。
「僕はもう寝る、今日はそれなりに疲れた」
「慣れない場所で、長い時間過ごされていますからね。無理もないでしょう。滞在など、大丈夫でしょうか?」
「僕を誰だと思っている? ファントムハイヴ家の当主だぞ。何も問題はない」
「体には、十分に気を付けて下さいね」
「そうだな」
不意に、セバスチャンが窓の外を見つめる。じっと見つめ続ける彼に、シエルは首を傾げて声をかけた。
「どうかしたか?」
「いえ、我々の出る幕では御座いません。早急にお部屋に参りましょう」
「セバスチャン……っ!?」
突然シエルを抱き抱えたセバスチャンは、勢いよく書庫を飛び出した。途端、書庫の方から大きなガラスの割れる音が響く。