第4章 襲撃
「あの頃は、私がいなくなると隠れて泣いておられたのに……人間とは、ちゃんと成長する生き物なのですね」
ふっと不敵に笑むと、シエルがいる書庫へと引き返すのだった。セバスチャンが書庫を訪れる頃には、何故かシエルとクライヴが談笑していた。
「坊ちゃん……?」
「ああ、セバスチャンか。どうだった?」
「ええ、許可を頂きましたよ」
「彼女の執事から滞在の話を持ち掛けられてな、彼女も了承しているということだし、僕は暫くここに滞在する。お前も同じくだ、セバスチャン」
「御意」
「クライヴ、君は本当に本が好きなんだな」
「そうですね……姫様も、本がお好きですから」
どうやら、シエルとクライヴは本の話で少々盛り上がっている様子。セバスチャンは「暖かい物でも、お持ちいたします」と一言告げると、再び廊下へと出て行った。
――これだから坊ちゃんは……。
彼が何を裏で企んでいようとも、彼が人間である限り悪魔であるクライブを出し抜くことは難しいだろう。
「好奇心旺盛なところが、何とかなればよいのですが」
主人の子供らしい、好奇心旺盛な部分に悩まされている自分が、くだらないと心の中でセバスチャンは嘆いてみた
「……こんなお時間に、どうなさいましたか? セバスチャンさん」
「貴女は……リンスさんですね。お勤め、ご苦労様です」
「セバスチャンさんこそ。伯爵は、もうお眠りに?」
「いえ……何か、我が主に御用でも?」
「はい。今夜は少し、肌寒いので暖かいココアをお持ちしようかと思いまして」
「そうでしたか。では、もしご迷惑でなければ私に運ばせては頂けませんか?」
にっこりと微笑むセバスチャンに、リンスも笑みを返す。台車をそのままセバスチャンの目の前まで押してくる。