第4章 襲撃
淡い灯りだけを残した部屋は、ぼんやりと辺りを照らすだけで薄暗い。アリスは再びベッドに身を沈め、ぼんやりと考え事をしながら溜息をついていた。
「私には、やらなくてはいけないことがあるんだから……」
親指に嵌っている指輪を撫でながら、瞼を閉じた。失ったはずの指輪、けれど手元に戻ってきてしまった意味。まるで、あの頃のようだとアリスは微かに思うのだった。
「アリス様」
凛とした声が扉の向こうから聞こえ、控えめなノックが響いた。今度は誰だ? と思いながらも、彼女が聞き間違えるはずがない人物の声。
「セバスチャン……?」
「はい。今、少し宜しいでしょうか?」
「ええ……」
アリスは少しだけ重い体を動かして、扉を開けた。微笑んで出迎えたセバスチャンだったが、アリスの姿を映したと同時に表情を崩す。
「顔色が優れないみたいですね。失礼します」
彼女の肩を抱き、優しくベッドに座らせる。
「今、お水をお持ちします。少々お待ちください」
「……いいっ!」
ぐっと、アリスは彼の服を掴んで制止した。彼女の手は、僅かに震えていてそれを見たセバスチャンはそっと彼女の手に自らの手を重ねた。悪魔に人間と同じ体温があるのかは、さておき。