• テキストサイズ

黒執事 Blood and a doll

第3章 一夜



「セバスチャン、どう思う」
「それはアリス様のことでしょうか、それとも」
「あのクライヴという男」
「はい。私と同じ、悪魔です」
「ふんっ、やはりそうか。そういえば、随分アリス嬢と親しいみたいじゃないか? セバスチャン」
「もしや、晩餐会での非礼のことを責めていらっしゃるんですか? 申し訳ございません。戯れが過ぎました。少しでも、彼女と距離を縮めておく必要がある気がしまして」
「御託はいい。アリス嬢に、今夜泊まらせてもうことが出来ないか、聞いてきてくれないか?」
「御意」


 セバスチャンはシエルを書庫に置いて、一人廊下を歩く。前方に黒い燕尾服が見えたところで、彼は立ち止まった。


「おや? 貴方は、クライヴさんではありませんか。先程の晩餐会では、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。セバスチャンさんは、これからどちらに?」
「はい、アリス様にお話ししたい件が御座いまして。お尋ねするところです」
「……。姫様は今お疲れです、用件なら代わりに私が聞きましょう」
「いえいえ。ご本人にお伝えするのが、筋だと思いますので。執事さんは引っ込んでいて下さい」
「……ほぉ」


 クライヴの眉が、ぴくりと動いた。


「つまり、私は邪魔者だと言いたいのですか?」
「わかっているじゃありませんか。ご理解いただけているみたいですし、素直に退いてはくれませんか?」
「姫様と貴方を二人きりにするくらいなら、一緒に着いていきますよ」
「クライヴさんはお仕事の途中では?」
「……」


 そう、クライヴは先程彼女に頼まれごとをして部屋を後にしたばかり。それもまた、セバスチャンと"同じ"要件をシエルに伝える為にだった。


「私は坊ちゃんと貴方が二人きりになることに、別段不安や心配は御座いませんよ。優秀な執事である貴方が、客人に手をかけることはないでしょう?」


 見透かすような言い方に、クライヴは少しだけ嫌そうに唇を噛んだ。相変わらず胡散臭いような、綺麗な笑みを浮かべるだけのセバスチャンに彼は諦めた様に睨み付けた。


「姫様に何かしたら、例え客人といえど容赦しないですよ」
「ええ、御心配には及びません」


 二人は絶対零度の視線を絡ませ、そしてどちらかともなく逸らしては、廊下をすれ違った。それぞれの目的の為に、その足を前へ進めた。

/ 205ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp