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黒執事 Blood and a doll

第27章 楽園



「セバスチャン、行くよ」

「ええ」


 草木を切り裂き、血を浴び、まるで泥沼の戦い。疲労感を見せないような立ち振る舞いでレイピアを振るアリス、いつも通り余裕の笑みを見せるセバスチャン、無表情を眼鏡で覆うクロード、一人傍観しながらも三人に敵の位置を知らせるアロイス。

 四人の鮮やかな戦いっぷりのお陰で、ほぼ化け物は一掃された。


「アリス、どうしますか? これから」

「そうね……」


 アリスの本来の目的は、エンジェルドラッグの首謀者を殺すこと。しかし今やその首謀者の正体が女王陛下と発覚した以上、下手に仕掛けることも出来ない。それに女王の傍にはあのグレイも未だ控えている。食えない男だ、とアリスは心の中で呟いた。


「アリスが行くなら俺も行くよ?」

「……いいえ、今はここで手を引きましょう。この化け物達がもし、屋敷中を占拠しているのであれば、これ以上の体力消耗はまずい」

「それもそうですね、我々はここで退散しましょう。本来の目的は、アリス様の奪還ですからね」

「あっそ。なら俺達は俺達で、やることあるから……この辺で。また遊ぼうね! アリス」


 クロードに抱き抱えられ、アロイスはその場を立ち去っていく。その光景を眺めながら、アリスは呟いた。


「疲れたわね……」


 重い重い一言を放つ。アリスにとって、ここまで辿り着くのにどれだけの痛みを犠牲にしてきたのか、わかりはしない。長い長い時間を経て、ようやく暴いた真実がこれではアリスも複雑な心境を抱かずにはいられないだろう。

 それを知ってか知らずか、セバスチャンは優しくアリスを抱きしめた。

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