第27章 楽園
「私がお傍におります。さあ、帰りましょう」
「……ありがとう」
アリスを抱き上げ、セバスチャンは屋敷の出口へと向かった。途中に襲い掛かる敵もおらず、難なく門を潜り抜けたところで見慣れた顔が出迎えてくれた。
「遅いぞ、セバスチャン」
「姫様! 御無事でよかったです」
シエルとクライヴが馬車を連れて、待ち構えていた。そんな二人を視界に入れたアリスとセバスチャンは、顔を見合わせて笑った。
「……どうやら、セバスチャンとアリスは上手くいったようだな」
「嫌な事実ですね、本当に」
二人の徒ならぬ雰囲気を察したのか、シエルとクライヴは反対に溜息をついた。
「クライヴ」
「あ、はい……なんでしょうか」
おそるおそる、クライヴはアリスへと近づいた。浚われる前に、自分がしてしまったことを悔いている様子だ。セバスチャンはアリスを降ろし、そのままアリスは何を思ったのか、拳で軽くクライヴのお腹を叩いた。
「ひ、姫様……?」
「私は今から貴方に残酷なことを言うわ。それでも、受け入れる覚悟はあって?」
「……。勿論です、私は貴女を……一人の女性として愛していますから」
「ふっ、あっそ。クライヴ・バロン。私の願いは……更に果てしない時間を費やし無くては達成できぬほど、大きな渦になりつつある。それでも、お前は私だけの"悪魔で執事"でいろ。命令だ」
「……イエス・マイロード」
アリスへと、クライヴは跪く。
執事であること、契約の悪魔としてこれからも仕えること。それが意味するものは、アリスは彼の愛を受け入れないことに繋がる。クライヴはそれでも、清々しいほどの明るい笑みでアリスに笑いかけた。
これがきっと、アリス自身が出したクライヴとの答え。