第27章 楽園
「生きてたらまた会おうね! アリス」
「グレイのやつ……!!」
「今はそれどころではありません。この量……まずいですよ」
厚い化け物の壁に囲まれた二人は、動くことが出来ず背中合わせになって構える。
「――アリス!!」
何処からともなく、何かが降り注ぎそれが命中した化け物達が大量に倒れていく。化け物に一体何が刺さったのか、アリスは目を凝らして見た。
「……金色の、ナイフ?」
見覚えがある。声がした方へと慌てて視線を上げた。
「アロイス・トランシー。只今参上しました! なんちゃって」
「お久しぶりでございます。アリス様」
「アロイス!!? それに、クロード……」
アロイスはクロードに抱えられ、そのままアリスの元へと地に足をつける。同時に化け物を踏みつける辺りは、彼らしいのかもしれない。
「生きてたの? アロイス」
「あの時は本当に最悪だったよね、痛みで気絶しちゃったけど一歩間違えていたら死んでたね」
「は……?」
「私が旦那様を本当に殺すわけないじゃないですか」
――そのわりには本気だった、絶対に本気だった。
言葉を呑み込んで、ただ疑いの眼差しだけをクロードに向けるアリスだった。あの時の彼の言葉を覚えていたならば、当然と言えるかもしれない。
「まぁ、俺が来たからにはアリスにだけ辛い思いはさせないって。クロード、ちゃちゃっと片付けちゃってよ」
「イエス・ユアハイネス」
すっかりいつもの主従関係を見せつけるアロイス達に、この状況下の中で深く考えるのをアリスはやめることにした。