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黒執事 Blood and a doll

第27章 楽園



 二人の攻防戦を見守っていると、アリスはふと後ろを振り返った。


「……気のせい? 何か、いる気がする……んだけど」


 一度気になるとずっと気になるというもので、アリスは目を凝らし庭全体を眺めた。一体何に違和感を覚えたのか、それを探る様に。

 風に乗って鼻につく、腐敗臭。


「これは……何」


 何かが来る。


 拳銃を瞬時に手にし、後ろでセバスチャン達の戦闘音を聞きながらついにアリスはその場を動く。


「アリス! いけないっ!!」


 しかしセバスチャンの制止の声が響く。それに反応するようにグレイもアリスへと視線を向けた。そこで初めて二人もこの庭を取り巻く異様な空気を知る。


「あれ……」


 ぽつりと呟いたグレイが動きを止めたところで、セバスチャンはアリスの元へと駆け出す。


「っ……!!」


 アリスの目の前に、見たことのあるものが飛び出してくる。しかしそれは人間ではない。腐敗臭に塗れた、あの豪華客船で出会った化け物。


「アリス!!!」


 銃声が響く、アリスが構えた先には化け物の頭部。化け物が動きを止めた途端、セバスチャンがとどめを刺すように排除した。


「セバスチャン……ありがとう」

「いえ。しかし、何故こんなところにこの化け物が……」


「あーあ、見つかっちゃったか」


 グレイの声に二人は一斉に彼を見た。グレイは悪戯がばれた子供のように、笑いながらアリス達へと言い放った。

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