第26章 愛欲
「な、なんでここに……!? むぐっ」
「しっ。急に大きな声を出さないで下さい。馬鹿なのですか?」
セバスチャンに手で口を塞がれ、アリスはもがもがと抗議する。勿論何を言っているのかわからない為、セバスチャンは小馬鹿にするように嘲笑した。
「ぷはっ……わ、悪かったわね……煩くして。でも、一歩間違えれば私、窒息死していたわよ?」
「その方が、持ち帰るには便利そうですね」
「おいこら」
セバスチャンはアリスの頬を包み込むと、こつんと額同士をくっつける。
「セバスチャン……?」
「まったく、貴女という人は……どうしてこうも危なっかしいのですか? クライヴさんに任せておくのが、とても心配になってきました」
「何よ、その訳のわからない過保護発言」
「……言ったでしょう? 私は、アリス様が大切だと。だから、あまり危険な目に遭ってほしくないのです……なのに」
「どう、したのよ……貴方がそんなことを言うなんて、変よ」
「今まで言う必要がなかったので、言わなかっただけです」
セバスチャンの瞳の中に、アリスが映り込む。そっと、セバスチャンは触れるだけのキスをアリスの唇へと落とす。すぐにアリスの困惑した表情が見て取れて、セバスチャンはくすっと笑った。
「なんで、そんな風に触れるの……セバスチャンが何を考えているのか、わからない」
「教えて差し上げましょうか?」
アリスから手を離した。