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黒執事 Blood and a doll

第25章 真実



「嘘? 嘘なものか! じゃあ、どうしてあのエンジェルドラッグの被害者に、君はまんまとなってしまったのだろうね。心当たりはないの? 何故、君はあのドラッグに関わることになったのかな?」

「……全て、アリス様が天使になることを想定して、敢えてラビットファミリーに襲わせ、自分の駒に相応しい形に仕立て上げた、とでも?」


 返事が出来ないアリスの代わりのように、セバスチャンが口を開く。


「全部陛下の掌の上ってわけ! アリスがいい子にエンジェルドラッグを調査することも、捕まってドラッグを打たれることも、死なずに生き残って天使となり常人な治癒力を手に入れることも、全てボクらの計画したシナリオ通りだったんだよ!!」


 グレイの高笑いが、ここにいる全てに嫌悪感を与えていく。


「……つまり、貴方達がエンジェルドラッグの首謀者ですか? だから先日のラビットファミリーの事件……糸を引いている者の姿を確認できないわけです」

「その通りだよ。そして、天使になったアリスは……どうなると思う?」


 グレイの白い服が、アリスの血で汚れていく。恍惚気味にそれを眺めるグレイに、その場にいた誰もが吐き気を覚えるほどだった。


「陛下の盾として、傍に置かれることが決まったんだ。彼女を貰って行くよ。最も……アリスの綺麗な瞳も、可愛らしい唇も、白い手足も髪の一本一本、流れる血の一滴でさえも、全部……あの頃から、ボクのものなんだから」

「そこまでして、アリス様を貶める理由は?」

「理由……」


 グレイは「うーん」と唸った後、少し考える素振りを見せて、嫌な表情を浮かべた。

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