第25章 真実
「でも、きっと私は彼がただのクライヴに成り下がった時点で、裏切るのでしょうね」
「ふんっ。そうでなければ、悪魔の執事など傍に置けるか」
二人が視線を悪魔達に向けた、その時……――
「アリス、ここにいたんだね」
闇は彼女を絡め取る。まだ、まだ逃がさないとばかりに。
「……っ、アリス!!?」
シエルの声が響き渡る。一斉にセバスチャンとクライヴが、シエルの声を辿る様に視線を向けた。そこには……。
「こんにちは、ファントムハイヴ伯爵。そしてその執事君達」
にっこり笑う、グレイの姿。しかしその手に握られていた剣が、アリスの肩を貫いて。
「――――っ……!!!」
声にならない声を上げ、アリスの血が地面を濡らす。広がる赤に、戸惑うように立ち上がるシエルなど見向きもしないでグレイは剣を引き抜いた。
「迎えに来たよ、アリス」
痛みに動けないアリスを抱き上げたグレイは、そっと彼女の頬に口付けて、一言残す。
「ご苦労だったね、ファントムハイヴ伯爵。君がアリスを監視してくれたお陰で、彼女のデータを集めることが出来たよ。ありがとう、というべきなのかな? ははっ」
「どういうことだ……グレイ伯爵」
睨むシエルをまるで嘲笑うように、グレイは「まだわからない?」と笑う。
「アリスは最初から、陛下の玩具だったんだよ。そうとも知らないで……今まで馬鹿みたいに生きて、陛下の命令に従って……滑稽だよねっ!! あはははっ!」
その場にいた誰もが、凍り付く。
アリスは痛みで遠くなる意識の中、グレイの言葉を耳に入れ「嘘……」と呟くだけ。