第25章 真実
「大切、ですから」
すぐに彼は背中を向けてしまう。
嘘だ、そんなの絶対に嘘なんだ。悪魔はとても賢くて、用意周到で、卑怯で残酷で……だから言うはずがないんだ。口にするはずがない。
アリスの心臓が、脈打つ。早く、早く。
たった一言の言葉に、狂わされるように。
「さて、クライヴさん。これでも私……怒っているんですよ? アリス様にあまり、酷いことなさらないで下さい。彼女に酷いことをしていいのは、私だけなんですから」
「いつからそんな決まりが出来たんですか? 御託はいいです……僕の姫様、返してもらいます」
「でしたら単純に、私を殺してはいかがですか?」
「そうです……ねっ!」
クライヴが先に動き出す。踏み込んで、切りかかる。素早くそれを避けるが、クライヴはすぐに切り返してくる。剣を受け止められるだけの物がないセバスチャンは、ただ彼の攻撃を避け続けることしか出来ない。
それを眺めていたアリスは、はっと我に返りスカートの下に隠していた拳銃のことを思い出す。せめて、剣を受け止めるくらいは出来るだろう。そう考えたのか、拳銃をホルスターから抜き取ると声を上げた。
「セバスチャン!!」
アリスが投げた拳銃を、セバスチャンは剣を避けながらしっかりと受け取る。そこで初めて、上から真っ直ぐ振り下ろされるクライヴの剣を見事に受け止めた。
「拳銃一つで何が出来るんですか?」
「そうですね。……ああ、ではこうすると致しましょう」
クライヴのもう片方の腰に、鞘が差してあることに気付いたセバスチャンは、拳銃で剣を振り払って彼のもう一つの剣を掴んで奪い取った。