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黒執事 Blood and a doll

第25章 真実



「その血は……一体誰のものなの? 私があげたその燕尾服を汚している真っ赤な血は、一体何人の人間の血なのっ!! 答えなさいっ! クライヴ……ッ!!!」

「ああ……誰の、何でしょう? 姫様を探している間に、汚してしまいました。申し訳ありません」

「そんなことを言っているんじゃ……っ」


 不意に、傍観者に徹していたセバスチャンが向けられた切っ先を手で掴んだ。ぎゅっと掴んでは、そこから血が流れ落ちる。


「クライヴさん、貴方は執事に向いていませんね」


 切っ先を握り締めたまま、思い切ってクライヴの懐へと飛び込むと、セバスチャンは迷わず彼の腹に蹴りを食らわせた。


「っ……!」


 ぐらりとクライヴが態勢を崩す。その隙をついて、セバスチャンは彼の腕の中からアリスを救出した。同時に、切っ先から手を離す。


「姫様……!!」

「執事は主人に忠実でなくてはね。自ら思考して動いてしまうくらいなら……いっそ、執事などやめてしまえばいいのに」

「それじゃあ、僕が姫様の傍にいる意味がなくなるじゃないですかっ!!」


 クライヴが剣を握り直し、構える。それを眺めながら、アリスをシエルのところへと運ぶ。


「アリス様、坊ちゃんと一緒にここにいて下さい。坊ちゃん、アリス様をお願いします」

「わかった」

「セバスチャン、何をするつもり!? これは私とクライヴの問題よ! 邪魔しないで!!」

「いえ、私は邪魔しますよ」


 そっと、セバスチャンはアリスの頭を撫でた。一瞬、アリスが見た彼の表情は今までに見たことがないくらい穏やかで、優しい笑みを浮かべていた。

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