第24章 亀裂
一通り買い物を終え、少しだけアリスは喧騒を離れてみることにした。静かな自然公園が見えたところで、その中へと歩いていく。
案の定、とても静かでほとんど人気がないと言える。ベンチに座り込み、ぼうっと空をアリスは眺めた。鳥の声が微かに聞こえる。
同時に、不審な足音も。
けれどその足音は、一定距離を保っており何かを仕掛けてくる様子がない。ということは、やはりアリスの想像通りストーカーの方なのだろうか?
アリスはもう少し動きを見る為、もっと薄暗く人気のなさそうな道を探し、その方へと歩いていく。するとその足音も、だんだん彼女へと距離を縮めてくるような気がした。アリスの鼓動が、無意識に早くなる。
静かな緊張が走る。
思わずアリスは、早足になる。勿論足音もそれに続く。見えない恐怖に今更怯えるアリスでもないが、見えない……というのは案外怖いもので。何処までも何処までも追いかけられ、逃げ場を奪われている気がして全身に寒気が走る。
ふと、タイルの微妙な段差にひっかかり、アリスは大きく上体を崩した。
「あ……っ」
――まずいっ、こける!!
そう思った途端、アリスの身体がふわりと抱き留められる。
「姫様……」
不気味で、黒い声が聞こえる。
「え……?」
驚愕の眼差しで、アリスが後ろを振り向けば……――。
「ああ、嬉しい。僕の、姫様だ……」
黒いフードの下に、血塗れの燕尾服を着た……。
クライヴが立っていた。