第24章 亀裂
「さて、もうすぐ街ですね。準備はいいですか? アリスお嬢様」
「……いつでもいいわよ」
満面の笑みを見せるアリスに、二人は思わず吹き出した。
馬車から降りれば、アリスを人目を意識するようにエリザベスの雰囲気をイメージする。
――愛らしくて、ふわふわ……ふわふわ兎。
そのイメージを脳内で保ちながら、街へと一歩踏み出した。街中は相変わらずの人混みで、慣れないふわふわのスカートを揺らしながら、普通に買い物に来たみたいにお店を見て回る。
エリザベスを意識しているせいか、アリスは出来るだけ可愛いお店へと足を運んだ。
甘いお菓子に、女の子が好きそうな愛らしい洋服の数々、勿論小物も忘れずに。エリザベスのお土産も兼ねていくつか購入してみる。
「お嬢ちゃん、一人でお買い物かい?」
ふと、アリスは雑貨店の店員に話しかけられ顔を上げた。
「ええ、そうなんです。ママの誕生日プレゼントを探しに」
にっこり微笑むと、店員は「それなら」といくつか小物を見せてくれる。アリスはエリザベスのことを想像しながら一つ選び、それも購入する。
不審者に間違われない程度に、隠れてアリスを監視するシエル達は……。
「……あいつ、普通に買い物しているぞ」
「流石アリス様。笑顔がお上手なこと」
「女というものは、七変化するものだと聞いたことがあるが、まさにアリスはそうだな」
目的を忘れそうな程に買い物を続けるアリスに、二人はそんな感想を述べるのだった。