第24章 亀裂
「は、はしたないぞ! そんなところに!!」
「ふわふわのスカートの下なら目立たないでしょ? 何動揺してんのよ」
アリスは然も「当然」とでも言いたげな顔で、けろっと答えた。シエルは未だ頬をほんのり赤く染めて反論したげだ。しかし、それをアリスが聞き入れるわけもなく事は進む。
「アリス様。もし危ないと感じたら、無理だけはしないで下さいね?」
「セバスチャンに心配されるとはね。大丈夫よ、必ずエリザベスのストーカーを捕獲してやるわ!」
「だから、ストーカーと決まったわけじゃ……」
「シエルは細かい」
エリザベスは家で留守をしてもらうことになり、三人は早速馬車でエリザベスがよく買い物に出るという街まで走らせる。
馬車の中は、見慣れないアリスの姿のせいか、少しだけ沈黙が重い気がする。
「アリスがもし、ただの令嬢だったなら……こんな感じなんだろうか?」
「本気でそう思っているのだとしたら、シエルは疲れているんだと思うわ」
「そんなに全否定しなくてもいいじゃないか。よく似合っているぞ」
「と言いながら隠れて笑うの、やめなさい」
「アリス様は愛らしい物より、美しい物の方が似合いますからね」
「どっちでもいいわよ。私に似合っていれば」
興味がなさそうに言い放つと、アリスは地毛ではない金色の髪を触りながらそわそわしていた。それもそのはず、いつもの自分なら着ないような可愛らしい洋服に袖を通し、見慣れない金色の髪がくるりと綺麗に巻かれて目の前で揺れているのだから。
けれど、それとは反対にシエルとセバスチャンは楽し気だった。きっと貴重な彼女の格好に、愉快そうにしているだけだろうが。