第24章 亀裂
「おい、アリス。もう少し愛想よく出来ないのか」
「あのね! 人の性格ってね、環境と育ちで形成されるものなのよ!? そして表情もそう! わ、私にエリザベスみたいな天使の微笑みが出来ると思う?」
「思わない」
「シエルっ!!!」
ぎゃーぎゃーと騒ぎ始めるアリスに、セバスチャンはぽんっと彼女の頭に手を置いた。
「こら、落ち着きなさい。折角綺麗に仕立て上げたのに、崩れます」
「何よ文句ある!?」
「あります。貴女は今、エリザベス様の代わり。ダミーなのですから。大人しく演じて頂かないと……」
「とても気に食わないわ」
「そういうアリス様、嫌いではないのですがね」
残念ですが、と呟きながらセバスチャンはアリスの頭に愛らしいヘッドドレスをつけた。案外似せようとしてみれば、出来るもので……少し大人びた雰囲気のエリザベスっぽいアリスの完成である。
「行儀よくなさって下さい。貴女が失敗すれば、エリザベス様に危害が及ぶ可能性も御座いますよ? ストーカーさんだと、尚更……」
「わかったわよ……で? どうすればいい?」
「そうだな。一人で街を一通り歩いてみるのはどうだ? 随時、その様子を僕とセバスチャンで監視する。危険を察知すれば、すぐに助けに行く」
「まぁ、そういうことなら……あ、用心の為に拳銃の一つくらいは持たせてもらえない? ちゃんと上手にドレスの下に隠すから」
「……大事に使えよ」
シエルに渡された拳銃を、アリスは太腿のホルスターへと拳銃を仕舞った。