第24章 亀裂
「悪いな、アリス。少し君に力を貸してもらいたい」
「構わないけど……どうかしたの?」
「実は……」
先程エリザベスから聞いた話を、そのままシエルはアリスに話した。アリスは難しい顔をしたまま、何かを考えているみたいだった。
「えっと……それは、ストーカーなの?」
「ストーカー……?」
今度はシエルが難しい顔をする番だった。
「そういうものなら、まだ可愛いんだがな……。女王からも、貴族の娘が惨殺死体で見つかる事件について酷く嘆かれておられる。その事件と、何か関連性があるとも捉えられるし」
「それはわかるけど……ストーカーってことも、別にありえなくはない話でしょ? なんたって、エリザベスは可愛いし」
「も、もうっ! アリスさんったら」
「……しかし、情報が少なすぎてどう対策を練ればいいか。流石の僕でも……」
「ならいっそのこと、誰かがエリザベスの代わりに囮になればいいんじゃないかしら?」
途端に、アリスへと視線が集まる。とても嫌な予感がする……そのアリスの思いは、見事に的中した。
「適任がいるな。アリス、君がエリザベスの代わりになり調査をしてみるのはどうだ?」
「いいんじゃないの? ちょっと平和すぎて、退屈していたし」
微笑んで、アリスはシエルに応えた。そう囮が上手くいくのか。しかし、小さな手がかりでも今はほしいところ。すぐにアリスがエリザベスとして街に出る準備は行われた。
淡いピンクのドレス、金色の髪。可愛らしく巻き髪に仕上げ、ツインテールに。赤い瞳を覗かせて、仏頂面のアリスがそこにいた。