第24章 亀裂
「……詳しくは、わからないけど。街へ買い物に出ると、足音がついてくるような気がするの。その時はポーラも一緒だったから、気のせいだと思ったんだけど……外にいると、常にその音と視線を感じるようになって。私、怖くて……」
「そうか……そんな中、よくここへ来ようと思ったな」
「怖かったから、シエルの顔が見たくなっただけよ」
ぎこちなく、少しだけ申し訳なさそうにエリザベスは笑った。シエルは目の前の書類に視線を落とし、サインを書き終えるとすぐに椅子から立ち上がった。
「坊ちゃん?」
「自分の許嫁が怖い目にあっているんだ。それをどうにかしてやるのは、許嫁として当然だろう?」
「では、調査なさるのですか?」
「ああ……」
「シエル、でも私の勘違いの可能性も……!」
「勘違いじゃないと思ったから、僕のところへ来たんじゃないのか?」
「……っ」
シエルはすぐに、部屋にアリスを呼ぶようセバスチャンに指示をした。セバスチャンが部屋を出たのを確認すると、エリザベスへと歩み寄る。
「大丈夫だ。勘違いならそれに越したことはないし、少しでも僕は君が安心して日々を過ごせるようにしたいだけなんだ。気にしないでくれ」
「だけど、シエル忙しいのに……」
「いいんだ。丁度、女王陛下からそれに似たような内容の事件解決を求める手紙が来ていたから」
そこまで話すと、セバスチャンとアリスが部屋へと入ってきた。