第23章 安息
朝の光が部屋を満たす。瞼が動き、少しずつ意識が現実とリンクする。アリスは、ゆっくりと目を開けた。
「……見慣れない天井」
それもそうだ。ここはアリスが慣れ親しんだ場所と、異なるのだから。辺りを見渡し、身体を起こした。カーテンの隙間から入り込む太陽の光のお陰で、白いカーテンはクリーム色にほんのりと色付いている。
アリスは息を吐き、途端に喉が酷く乾いていることに気付く。
(水……飲みたいな)
ベッドから抜け出そうとした途端、控えめにノック音が響いた。
「アリス、起きているか?」
「……シエル?」
「今、入ってもいいだろうか」
「ええ……どうぞ」
扉を開けて入ってきたシエルの手には、水差しとグラス。通常、そういうことは執事であるセバスチャンに頼むことのはずなのだが、アリスのそんな思いを見透かしているのか、シエルは困ったように笑った。
「おはよう。喉が渇いていると思って、水を持ってきた」
「……シエルが水差しとグラスを持っているから、執事ごっこでもしているのかと思ったわ」
「いや、そんなわけないだろう?」
それもそうか。シエルは水をグラスに注ぎ、アリスへと差し出す。受け取ったアリスはそのまま一気に飲み干してしまった。余程喉が渇いていたのかもしれない。