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黒執事 Blood and a doll

第22章 独占



「私、思い上がっていたのかもしれない……守らなくてもいい使用人がほしいなんて。そんな馬鹿なこと、あるわけないのに……」

「そんなことありませんよ。あの屋敷の炎です、脱出するのはとても難しかったと思います。貴女の使用人の実力は以前拝見しております。もしかしたら、それを知った上で犯行に及んだ可能性も」

「もう……いいわ。今は何も、考えたくないの。せめて……クライヴの顔さえ見ることが出来たなら」

「……そんなに、大事ですか? あの人が」


 アリスが瞼を閉じれば、はらりはらりと次から次へと涙が零れ落ちる。


「うん、大事よ……彼がいたから、私は今日までやってこれたのだもの」


 セバスチャンの目が細められる。手袋を取って、人差し指でそっとアリスの涙を掬った。そのまま赤い舌で舐め、一瞬顔を歪める。


「アリス様、私を見て下さい」


 言われるがままに、アリスは目を開けしっかりとセバスチャンを見つめた。涙に濡れた彼女の瞳は酷く潤んでいて、セバスチャンはアリスの頬に軽くキスをして、その小さな身体をぎゅっと抱きしめた。


「貴女の執事でない今、私達の間に主従関係はございません。だからこそ、願うことが出来る。私が出来る限り貴女のお傍にいます、いさせて下さい。それは執事としてではなく、悪魔としてではなく、ただのセバスチャンとして」

「何よそれ……何変なこと言ってるの」

「私だけが、貴女を守れるのです」


 アリスはふっと鼻で笑って馬鹿みたいと呟いた。

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