第22章 独占
「アリス、君さえ良ければ僕の屋敷に住むといい。必要なものがあれば用意させるし、君も……少しはちゃんとしたところで、人の目につくところで休んだ方がいい。自殺だなんて愚かなことは、してくれるなよ」
「見くびられたものね。そんな愚かすぎること、しないわよ」
「そうか……セバスチャン。彼女に一番広くて綺麗な客室を用意してやれ」
「はい、かしこまりました」
セバスチャンはアリスを連れ、シエルの部屋を出た。部屋に一人残ったシエルは、深く椅子に座り直しセバスチャンが書いた報告書に目を通していた。
「どうにも今回の件、腑に落ちないな……何故アリスの屋敷を焼く必要があった? ラビットファミリー本体は必ずアリス本人がアジトに出向くことなど、わかっていたはず。天使以外に興味などないだろう……では、何故」
シエルは大きな溜息をついた。
「アリスを、一人にすることが目的だとしたら……それによって、一番得をするのは、誰だ……?」
彼の呟きは、部屋に満ち煙のように消えていった。
アリスを部屋に案内したセバスチャンは、彼女の部屋に暖かい紅茶を運んでいた。
「アリス様、良ければ飲みませんか? 暖かいミルクティーです」
「……ありがとう」
カップを受け取り、アリスは紅茶に口をつけた。体内に巡っていく暖かい紅茶の味とぬくもり。ほっと安心したのか、はらりと一粒の涙がカップの中へと落ちた。