第22章 独占
「ありがとう」
「……何がですか」
「私は結果として貴方に全てを任せる形になってしまった。自分の手で、終わらせると誓ったのに……」
「何を今更。脆弱な人間の分際で、そんなこと言わなくていいです。まだ、私に守られる人間であればいいです。さて、屋敷につきましたよ」
アリスが窓から屋敷を眺めた。けれど……。
「屋敷が……!!」
馬車から慌てて出ていく。アリスが目にしたのは、炎に焼かれる自らの帰るべき場所。庭も、何もかもが赤い染まる。深紅の瞳でその屋敷を映すと、ゆっくりと近づこうと一歩踏みだそうとした。
「いけない……!」
セバスチャンが彼女の手を掴み、それを止める。彼女は暴れるように、腕を振り回した。しかし、セバスチャンの力に敵うはずもなく、そのまま抱きしめられてしまう。
「一体、誰がこんなことを……まさか、ラビットファミリーもまた全てを終わらせるつもりだったのでしょうか」
「どうして、どうしてこんなことに……っ」
「この炎では、他の使用人達も……生きているか、どうか」
「そんな……っ、ギル! リンス、カレン、ナタリー……!! 誰か、誰かっ!!!」
アリスの悲痛の叫びだけが炎に混ざって、空へと上る。
炎は勢いを増すばかりで、誰の姿も見えない。この調子では、きっと……助かっている者は、いないのかもしれない。セバスチャンはアリスの肩を抱き、少しずつ屋敷から遠ざけ馬車の方へと戻っていく。