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黒執事 Blood and a doll

第22章 独占



 全てが崩れ去り、壊れる音もなくなり、それでも……二人はその場に立ち尽くした。


 クライヴが、現れるまで。



 結局、彼はいつまで待っても帰ってくることはなかった。








 未だ、セバスチャンの腕に抱かれたまま、アリスは顔を伏せていた。


「アリス様……馬車で、屋敷までお送り致します」

「いい……」

「いえ、同行させて頂きます」


 いつも以上に覇気のない彼女に、セバスチャンは半ば押し切る形で彼女と共に馬車へと乗り込んだ。遠ざかる。警察が慌ただしく現場に向かう姿を、窓越しに見つめた。


「もしかしたら、先に屋敷に戻っている可能性もありますね」

「……そうだとしたら、一番最初にぶっ飛ばしてやるわよ」


 少し元気が出たのか、アリスは僅かではあるが、笑みを見せた。


「ねぇ、私は……これで過去を断ち切ることが出来るのかしら」

「過去は断ち切るものでしょうか? 切り離してしまえば、学ぶことは出来ない。受け止めて、受け入れて、跡形もなく消えていくまで呑み込んでしまえば。もうわからなくなりますよ」

「ふっ、何それ……」

「それがどんなものであれ、今のアリス様には関係ないのでは?」

「過去は過去でしかないってことを言いたいのかしら」

「まぁ、そうですね」


 アリスはふと、セバスチャンの手を取った。突然の彼女の行動に、セバスチャンはきょとんとしている。それが彼女からしてみれば、あまりにも面白いのかくすくすと笑い始める。

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