第22章 独占
「ラビットファミリーはこれで壊滅でしょう、本当に」
「どうしてそんなことがわかるの?」
建物の奥で、地響きと共に大きな爆発音がした。がらがらと崩れ始める壁に、セバスチャンはアリスをお姫様抱っこで抱え上げた。
「私達がここまで辿り着くということを、黒幕は知っていたのでしょう。ならば、その者は安全な場所にいるはず……それに、あの時貴女と約束しました。ラビットファミリーを壊滅させると」
「そんな約束、守る必要が貴方にあるの?」
「ええ……守る価値ならありますよ」
アリスを抱え、セバスチャンは脱出を試みる。足場が悪くなっていたが、そんなことは彼には何の問題もないらしい。軽々と瓦礫の山を抜け、外の光はもう目の前だった。
「貴女が過去の悪夢で魘されることがなくなる」
飛び出した先にあるのは、限りなく広い青空と太陽の光だけ。
二人が脱出したと同時に、入り口は崩れ去り建物は勢いよくその姿を失う。瓦礫の山が出来上がる中、ふとアリスは口を開いた。
「……クライヴは?」
「アリス様?」
「クライヴはどこ!? まだあの中にいるんじゃ……っ、助けないと!!」
「っ……、暴れないで下さい! 彼も悪魔なのですから大丈夫ですよ。簡単に死にはしません」
「でも……!!」
ぎゅっと、優しくアリスを抱き抱える手に力を込める。アリスは悲痛そうに顔を歪め、そして俯いた。聞こえてくるのはクライヴの声ではない。瓦礫が崩れ去り、全てが無になる音だけ。無情にも、時間は過ぎていく。