第21章 約束
「クライヴ!?」
「セバスチャンさんと先へ行って下さい、姫様。私は少々、こいつらを片付けてから向かいます」
「馬鹿! あんたも一緒に……っ!」
「私は……貴女の害為すものを殺す、悪魔で執事ですから」
彼の漆黒の長い髪が揺れる。追いかけてくる奴らの中へと、自ら飛び込んでいく。その様を背後に見届け、それでもアリス達の足は止まらない。今此処で止まってしまえば、クライヴが残った意味がなくなる。
それは百も承知で……二人は更なる奥へと、駆け抜けて行った。
互いの足音だけが響く。最奥。
小さな蝋燭の灯りが、そこにいる人物をゆらりと照らす。
「あんたがアリス・ヴァインツ……天使か」
「ここにいる奴らは全員、ラビットファミリーね? ボスは何処かしら?」
「さぁな……しらね。俺は幹部、トランス。その隣にいるのはあんたの執事か? あの時と同じ……だな」
「あの時?」
セバスチャンはふっと笑うと、赤い瞳を惜しげもなく晒し男を睨んだ。
「同じだなんてとんでもない。私はこんな愚か者の執事などではありませんよ……」
「じゃあ、用心棒気取りか? まぁなんでもいいや。数年前、ラビットファミリーを壊滅に追い込んだ男も燕尾服を着ていたそうだからな。丁度いい憂さ晴らしだ」
「戯言ですね。貴方達には、憂さ晴らしさえ出来やしませんよ」
「……天使をこっちに渡してもらおうか」
「嫌だと言ったら?」
男は腰にしていた剣を二本抜いて、セバスチャンと対峙する。