第18章 悪戯
「坊ちゃん。こんなところでかくれんぼですか?」
「そうだな。お前が一番最初にこの部屋に来ることはわかっていたことだ」
「なるほど……私と勝負をなさるおつもりですか」
「正々堂々とな……とでも言うと思ったか?」
エリザベスが勢いよく、セバスチャンに抱きついた。優しくセバスチャンは受け止めると、余裕を見せるように「大丈夫ですか?」とエリザベスを心配する。
「お前はまだまだだな」
シエルはアリスの手を掴み、部屋を飛び出した。その手には、部屋に隠されていたお菓子を握り締めて。アリスが走りながら後ろを一瞥するとセバスチャンが顔を出していた。
「アリス様っ!!」
「セバスチャン! 彼女とお菓子を手にしたければ僕を捕まえてみろ!」
「何を……っ、まったく」
セバスチャンが部屋から出ようとすると、それを阻止しようと必死に抱きつくエリザベスの姿が。アリスはもう後ろを向くのをやめた。
「後ろを確認しなくていいのか?」
「別にいいんじゃないの? ほら、見えない方が面白いこともある」
「アリスはゲームは好きか?」
「それなりに」
「じゃあ、このゲームを少しは楽しんでもらえると思う」
シエルはアリスを連れ、一目散にとある部屋に入ると、手早く隠し扉を開け二人で入り込んだ。隠れ家のような小さな部屋。僅かに蝋燭を灯せば、なんとか辺りを見回すことが出来る。その中は、一通り机と椅子が置いてあり他には本棚が置いてあった。
「さて、騎士の助けが来るまで、僕とゲームをしようか」
「それはどんなゲームかしら?」
「……負けたら僕のものになれ、アリス」
アリスに瞳が、細められた。彼の心の内を、探る様に。