第19章 願望
「ルールは簡単。この場所を、セバスチャンが見つければお前の勝ち」
「……そんなルールで大丈夫? きっと彼は、ここを見つけるわよ」
「それはどうかな。ここは、ファントムハイヴ家の中でも僕しか知らない隠し部屋だ。流石のあいつでも見つけられるかどうか……」
「まるで、貴方と彼のゲームのようね」
シエルは「そうかもな」と小さく呟いた。
静かな部屋、他の人達の声も物音でさえ聞こえてこない。この部屋だけ隔離されているみたいに。シエルは椅子に座り、アリスを見つめた。
「特別な意味はないゲームだ。どうだ?」
「シエルにとっては、どんな価値のあるゲームなの」
「……さあ? 単純に、セバスチャンからお前を奪ってみたいだけかもしれない」
彼の幼い瞳は、蝋燭の灯りを映しながら揺れる。憂いを帯びた表情は、幼さをある程度覆い隠し大人びた雰囲気を纏わせる。これが、ファントムハイヴ家当主。アリスは徐に本棚から、一冊の本を取った。