• テキストサイズ

黒執事 Blood and a doll

第16章 南瓜



「そういえば、セバスチャンは仮装しないのかしら?」

「仮装なら既に済んでおります」

「……どこが?」


 何処からどう見ても、いつものセバスチャンである。アリスはじろじろと彼を眺め、間違い探しを始めてしまう。セバスチャンはすっと彼女の手を取り、引き寄せる。


「もっとお近くで見てはいかがですか? その方が、見つかるかもしれませんよ」

「ちょっ……! べ、別に近くで見なくてもわかる時はわかるわよ!」

「では、見つかりましたか?」

「……見つからないわよ」

「ふふっ。これなら、どうです?」


 彼の指が、アリスの頬をなぞり顎を上げる。至近距離で彼の瞳と目が合って、アリスは心なしか頬を桃色に染める。ふと、彼が笑った時に僅かに違和感を覚えた。


「あら……?」

「どうかなさいましたか?」

「……牙?」

「おや」


 見つけましたか、とセバスチャンが口を開けるとそこにはヴァンパイアのような牙。


「ヴァンパイア執事で御座います」

「ああ、そういうこと……地味ね」

「美しい女性の血を求め、彷徨う。それが執事の皮を被っているなんて、質が悪いと思いませんか?」

「そう言ってシエルに納得させたのね」

「流石アリス様。すぐにそういうのは見抜かれてしまいますね」


 セバスチャンは彼女の耳元で、そっと囁いた。


「今夜、貴女にお話ししたいことが御座います。少しお時間頂けませんか?」

「……それは、個人的な話?」

「さあ、どうでしょう」

「聞かないと何をされるかわかったもんじゃないものね。いいわよ」

「ありがとうございます」


 二人の秘密の会話を眺めながら、クライヴは一つ咳払いをする。それを合図に、二人はぱっと離れた。

/ 205ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp