第16章 南瓜
「では、私は坊ちゃんのお手伝いをしなければいけませんので。後程、改めてご挨拶に伺います」
「そうして頂戴」
セバスチャンはにっこり微笑んで、アリス達に背を向けた。セバスチャンと入れ違いのように、一人の男が彼女へと近づいた。
「お前! 随分セバスチャンと仲がいいんだな」
「貴方は……?」
傍らに執事を連れ、印象的なのは独特な服装に高い位置で結ばれたポニーテール。
「俺はベンガル藩王国第26王子、ソーマ・アスマン・カダールだ! お前は!?」
「私はヴァインツ家当主、アリス・ヴァインツよ。こっちは執事のクライヴ。そっちの方は?」
アリスは傍らにいるもう一人の男に目を向ければ、会釈し男は挨拶を述べる。
「アグニと申します、ソーマ様のカーンサマーをしております」
「カーンサマー?」
「姫様、カーンサマーとは執事という意味でございます」
「なるほど。貴方はシエルの商売仲間かしら?」
「いや、違う! 俺はシエルの親友だっ!!」
「……し、親友?」
――シエルにもちゃんと友達がいたのか!!
アリスは失礼なことを心の中で叫びながら、ソーマを見つめた。王子というだけあって、容姿はハイレベルなもの。太陽のように眩しいオーラに、優しい雰囲気。今までに出会ったことのないタイプに、アリスは目を白黒させるばかり。
そんな彼女の心境など露知らず、ソーマは遠慮なくアリスの手を掴んだ。