第16章 南瓜
「何事ですか!!」
「お、セバスチャンか。いや……えっと、パーティー用の肉を焼いてやろうと思って……その、火炎放射器で」
「……バルド、貴方には何度も言っているでしょう? 火炎放射器は使わないで下さいと。ところで、フィニは?」
「ああ、俺が火炎放射器を構えたら逃げた」
それもそうだ。視界の端に、無残になったチキンがあった。セバスチャンはバルドから火炎放射器を取り上げて、厨房から追い出した。
「お、おい! セバスチャン!!」
「料理は全て、私がやりますので貴方達は出来上がったかぼちゃを、屋敷に置いて回って下さい。いいですね?」
かぼちゃが沢山詰まった籠だけを手渡した。
セバスチャンだけとなった厨房で、彼は静かに冷蔵庫を開けた。そこには、綺麗に包装された小さな小箱があった。
「折角アリス様が来られるのです、美味しくて楽しいパーティーにしなくては」
小箱を眺めた後、すぐに冷蔵庫を閉めて、腕まくりをした。
「さて、時間がありませんね。手早く、やってしまいますか」
鮮やかな手捌きで料理は出来上がっていく。厨房から煙ではなく、いい香りが漂い始めた頃、時を同じくしてアリス達はファントムハイヴ家へ向かって馬車に揺られていた。