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黒執事 Blood and a doll

第16章 南瓜



「フィニ……これは、どういうことですか?」


 セバスチャンが見た庭は、薔薇がほぼ全て刈り取られ蔓と棘だけになった、荊のような庭。冷ややかな視線をフィニに向けると、彼は今にも泣き出しそうな顔で主張を始めた。


「ち、違うんです! これは、その!! お庭の薔薇園のお手入れをしておこうと思い、それで……」

「それで、なんです?」

「そ、それで……」


 フィニは今にも消え入りそうな声で「ごめんなさい……」と呟いたのだった。


 過程はどうあれ、無残な庭に変わり果ててしまったのだから今更彼を攻めたてても、状況は変わらない。仕方なくセバスチャンは、あらゆる道具をかき集めフィニに声をかけた。


「庭の方は私がしておきますので、フィニはメイリンの手伝いを頼めますか?」

「わかりましたっ!!」


 仕事を与えられたのが嬉しいのか、それともまた違う理由なのか、フィニは笑顔で屋敷へと駆けて行った。


「さて……」


 道具を構え、セバスチャンはいつも通りの綺麗な笑みを浮かべた。


「ファントムハイヴ家の執事たるもの、庭の手直しも出来なくてどうします?」


 彼の光景を遠くで眺めていたシエルが、瞬きと同時に庭が元に戻っていくのを確認した。


「はぁ……かぼちゃ」


 手にしていたかぼちゃは、歪ながらに綺麗にくり抜かれハロウィン使用に出来上がっていた。それを適当な場所へ、花瓶の代わりのように置いた。

 またセバスチャンに捕まるのを避ける為か、シエルはすぐさま自分の部屋へと戻った。


 テーブルに、置いてあった一枚の手紙を拾い上げた。

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