第16章 南瓜
「だから、かぼちゃはお前達がやればいいじゃないか。そもそもかぼちゃなんて別になくても」
「そういうわけにはいきません。エリザベス様なら、きっとかぼちゃがないとこんなのハロウィンじゃない! と仰られますよ」
「……僕は別の仕事が」
「坊ちゃんがくり抜いたかぼちゃが一つでもあれば、エリザベス様もお喜びになりますよ」
「……はぁ」
シエルは厨房へと姿を消した。それを見送ったセバスチャンはパーティー会場へと移動した。中は装飾も終え、ハロウィン一色に染まっていた。
「さて……時間はまだありますね」
屋敷内を巡回し始める。何処を歩いてもハロウィン色に染まっており、セバスチャンは満足そうに微笑んだ。
「これぞ、ファントムハイヴ家のハロウィン」
「うわぁああああああああんっ!!」
「……この声は、フィニですか」
嫌な予感がする。セバスチャンは慌ただしく廊下を走る。途中でバルドとすれ違い「おいセバスチャン!」と声をかけられるが、今はそれどころではないらしい。バルドは首を傾げて、彼の背中を見送ることしか出来なかった。
庭に着いた頃、その悲惨な光景にセバスチャンは眉間に皺を寄せた。わざとらしい笑みを張り付けて。