第15章 覚悟
「僕は、悪魔も死神もいるのなら……天使もいると思うんですよ」
「貴方は……?」
「僕ですか? 僕は、クライヴ・バロン。貴方がよく知る、悪魔です」
「悪魔……? ミカエル、みたいな?」
「ミカエル? ああ、君と一緒にいた悪魔のことですか。そう、だと思いますよ」
「悪魔が何しに……」
クライヴと名乗った男は、何かを手に握りしめたまま私へと近づいた。
「哀れな子羊みたいですね。お名前は?」
「アリス・ヴァインツ……」
「そうですか。このままだと貴女、死にますよ?」
「……知ってる」
「生きたい?」
そんなの、決まってるじゃないの。
「もし生き延びることが出来たら、どうしたいですか?」
「エンジェルドラッグの首謀者を見つけて……この手で殺す」
「それだけ?」
「……ううん」
ミカエルがラビットファミリーを殲滅してしまったら、私のやるべきことは失われるかもしれない。今までよりも、私は強い想いを胸に抱き始めていた。
「ミカエルを、あの悪魔を殺すこと。この手で、最高な悦楽と共に」
もう迷ってはいなかった。
「私をこんな目に遭わせた人間も、悪魔も、全部全部殺す。全ての死が、私に生きていると教えてくれるはずだから。鮮やかな死だけが、私に……悦楽を与えてくれるから」
「とうに狂ってしまいましたか?」
「狂う……? はっ」
鼻で笑ってやった。狂うだなんて、そんな単純なものなら逆によかったのかもしれないけど。