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黒執事 Blood and a doll

第15章 覚悟



「これが私の"正常"よ」


 クライヴさんはにやりと笑うと、私の頬を包み込んで視線を合わせた。綺麗な赤い瞳だ、と思ったのは彼が最初で最後なんだと思う。


「貴女が生き残る選択肢は一つだけ。僕が持つ、エンジェルドラッグの錠剤を飲み込んで完全な天使になること。これに成功すると、貴女は人ではなくなると思いますが同時に規格外の治癒力を手にできます。そうなれば、その傷を塞ぐことも簡単でしょう」

「何故、そんなものを貴方が……」

「さあ……。僕が先程食らった魂が、持っていただけですよ」


 まあ、彼が持っていようとどう手に入れようとこの際関係ない。私は強く願いを込めて、彼に告げた。


「……天使なんて信じてない。けど、自分のことなら……信じられる」

「飲むのですね?」

「うん……」

「いいでしょう。僕は今から、貴女と契約します。そして、叶えましょう……貴女の崇高なる願いを」

「べ、別に頼んでない……っ!!」

「じゃあ、押し付けてもいいですか?」


 クライヴさんは私にそっと唇を重ねて、隙間にねじ込む様に錠剤を私の口の中へと押し込んだ。ねっとりとした舌が入り込んで、驚いて抵抗するが優しく頬を撫でられて……戸惑う。

 ゆっくり舌で溶かされた錠剤を、彼の唾液ごと飲み込んだ。

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