第14章 孤独
「アタシはね、自分らしく生きていくことの方が何倍も大事だと思うわよ。死神がそんなこと語ってんじゃないわよって思うかもしれないけど!! ……生きていたいなら、死んだ人を思うのはもうやめにしなさい」
「グレルさん……」
「過去に寄りかかっても、傷は癒えたりしないわ。今のあんたは過去に寄りかかって足を止めて、一緒にいてくれなきゃ歩かないって駄々をこねてるだけ」
「両親のことを思い返すのは、いけないこと?」
グレルさんは大きく溜息をついて、厭味ったらしくけれど清々しい程にあっさりと述べた。
「はあ? 勝手に思い出したけりゃそうすりゃいいでしょ! ただね、あんたが生きていく場所はそこじゃないって言ってんの!」
薄らと、私の瞳に光が灯った気がした。
「私にはここしかないって思ってた! 思っていたの。ここにいれば、もう一人ぼっちにならないんじゃないかって……そうやって、私はあの人に……ミカエルに、甘えていたのね」
進むこと、成長することをやめて私は子供のままであろうとし続けた。その傷に留まっていれば、癒えることはない代わりにこれ以上大きな傷にもならないと思っていた。
過去は変えられない、だからこれからの私が一人にならないだけの何かが欲しかった。
だから願った、悪魔に。いや、彼に、傍にいてほしいと……願ったんだ。
きっと彼はその愚かさに気付いたのかもしれない。もしかしたら、博識な彼は最初から気付いていたのかもしれないけど。